スモールタウンにおける人間ドラマ、心に染みるほろ苦き青春に乾杯!

『ラスト・ショー』(The Last Picture Show)1971年/アメリカ 

今回は私の大好きな監督であるピーター・ボグダノヴィッチがアカデミー賞作品賞を獲った1971年の青春映画であります。物語の舞台は1950年代初頭の米テキサス西部のアナリーンという殺風景な小さな田舎町。3人の若者と数人の中年男女にまつわる小さな逸話が丁寧に積み重ねられ、哀しくも切ないストーリーが全編を通して紡がれます。

何と言ってもそれぞれ登場人物の描写が素晴らしいのですが、なかでも親代わりのように優しく厳しい、町で唯一の映画館を経営する元カウボーイのサム・ザ・ライオンのベン・ジョンソンの演技。ちなみに出演オファーを3回断ったらしく、「出てくれれば、必ずオスカーを穫らせる」と監督が説得し、そしてその通りにアカデミー助演男優賞を受賞しました。そんな事ってあるんですね。

また70年代に全米のセックスシンボルで、『タクシー・ドライバー』にも出演しているシビル・シェパードの小悪魔ぶりが全開!(この人は歌もイケます。アルバム「Mad About the Boy」は愛聴盤です!)50年代当時に流行ったハンク・ウィリアムスなどのカントリーミュージックが全編に使われていてとてもいい感じです。

しかし後に続編が作られた時にも思いましたが、青春の夢とその終わりを描いた映画なので、どうしても若い時に観た感じ方とはまた違う感想を持ってしまいます。観る人のその時々の年齢によって、感情移入する登場人物がまた違ったりする映画だと思います。

つまり単なる青春映画ではない、まさに小さな町を舞台にした静かな人間ドラマ。少年たちの葛藤や生活を軸に、早くバージンを捨てたいと願う気まぐれな女の子、夫の会社の部下と不倫をする女、同性愛者の夫との生活に空しさを感じる女性など、スモールタウンに生きる人々の姿や交流が静寂の風景の中で描かれていく。いろいろと人生を考えさせる作品で、ぐっとお酒も進みます。

 

つかもと
つかもと

☆ラストショー と合わせて飲みたいワイン

フリサック / ヴェルナッチャ2022白

リンゴやシトラスの爽やかな香り、大人のはちみつレモンのような味わいを奥行きあるミネラルが支えます。エチケットの彼はカウボーイと言っていいんでしょうか?

フリサック ヴェルナッチャ2022白

『ラスト・ショー』(The Last Picture Show)1971年/アメリカ 

監督:ピーター・ボグダノヴィッチ

出演:ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、ベン・ジョンソン ほか

テキサスの田舎町で暮らす多感な若者たちの青春をノスタルジックに描いた作品。1951年、テキサスの小さな町アナリーン。高校生のソニーと親友デュアンにとって、元カウボーイのサムが経営する映画館は唯一のデート場所。しかし2人とも、それぞれ恋人との関係が上手くいかずにいた。そんなある日、フットボールのコーチから妻ルースの送迎を頼まれたソニーは、心優しい彼女に惹かれていく。

松尾伸也

「MY FAVORITE THINGS」編集長。酒、レコード、映画、活字、美味しいものの周辺に生きている。本来は「映画は劇場で鑑賞する派」だが、コロナ禍のスティホーム時期に録り溜めしていた映画を少しずつ見出して、いつのまにか千本を突破。映画をアテにチビチビと、好きなお酒を飲みながら過ごす週末を楽しみに日々を送っている。

ダテユウイチ

長崎県出身・福岡在住のイラストレーター。1989年生まれ。2014年より本格的に活動を開始し、シュールでユーモアなタッチの作品を特徴とする。ドローイングや個展を多数開催しており、雑誌、アパレル、企業とのコラボレーションも展開。地域に根ざしたPOP UPイベントなど、多様な形で表現を行っている。