海パン一つで怪演、超大物俳優バート・ランカスターに乾杯!

『泳ぐひと』(The Swimmer)1968年/アメリカ

主人公が高級住宅街の庭のプールとプールをつないで一直線に自宅まで帰っていくだけのストーリなのですが、途中から「あれ、何かおかしいぞ?」と観客は混乱してくる。そして事実がだんだんと明らかになっていき、主人公は現実を徐々に思い知らされていく。この徐々に明らかになっていくパターンの映画が私は大好物なんですよねー。例えば『バニー・レークは行方不明』(1965年)とか。(こちらもおすすめです)
この究極の空気読めない男を怪演しているマッチョなおじさんは、あのバート・ランカスター。ルキノ・ビスコンティの『山猫』やオスカー受賞作品『地上より永遠に』などに出演した超大物俳優であります。(なんとサーカス団出身という経歴!)なおこの映画では最初から最後まで海水パンひとつなので衣装代にはほとんどお金かかってません(笑)。
原作は「ニューヨーカー」誌に連載されたジョン・チーヴァーの短編小説で、郊外の高級住宅地に住むサバービアを皮肉った、何とも不思議な映画であります。日本では村上春樹が翻訳しているようですね。アメリカの経済成長の波に乗った富裕層を皮肉りながら、社会を蝕みつつある病の兆しのようなものを描いたちょっとストレンジな作品。まさに「異色作」という表現がこんなにぴったりな映画も無いでしょう。
こういう訳のわからない映画を、ちびりちびりとやりながらながら、カウチに座って深夜に観るのが最高なんです。

つかもと
つかもと

☆泳ぐひと と合わせて飲みたいワイン

ムーリラ プラクシス・ピノノワール2023赤
タスマニアの大富豪デヴィッド・ウォルシュが手掛けるワイン。きっとウォルシュ邸の庭にも、ネッドが泳ぎたくなるようなプールがあるはず。

ムーリラ プラクシス ピノノワール2023赤

『泳ぐひと』(The Swimmer)1968年/アメリカ
監督:フランク・ペリー、シドニー・ポラック
出演:バート・ランカスター、マージ・チャンピオン、キム・ハンター、ジャネット・ランドガード ほか
夏のある日の午後、ネッド・メリルは水泳パンツだけという姿で友人であるダンの家を訪れた。彼はそこから、高級住宅地の家々にあるプールを順々に泳ぎながら自宅へ帰ろうとする。だが自分の家に近づくにつれ、出会う人々の態度が冷ややかなものになっていく。

松尾伸也

「MY FAVORITE THINGS」編集長。酒、レコード、映画、活字、美味しいものの周辺に生きている。本来は「映画は劇場で鑑賞する派」だが、コロナ禍のスティホーム時期に録り溜めしていた映画を少しずつ見出して、いつのまにか千本を突破。映画をアテにチビチビと、好きなお酒を飲みながら過ごす週末を楽しみに日々を送っている。

ダテユウイチ

長崎県出身・福岡在住のイラストレーター。1989年生まれ。2014年より本格的に活動を開始し、シュールでユーモアなタッチの作品を特徴とする。ドローイングや個展を多数開催しており、雑誌、アパレル、企業とのコラボレーションも展開。地域に根ざしたPOP UPイベントなど、多様な形で表現を行っている。