数奇な主人公の一生を、2時間にまとめた名匠の手腕に乾杯!

『ガープの世界』1982 年/アメリカ

ジョン・アーヴィングのベストセラー小説を映画化したジョージ・ロイ・ヒル監督の『ガープの世界』(The World According to Garp)は大好きな映画です。ジョン・アーヴィングは村上春樹が日本語訳を担当していたりして、日本でもファンが多い作家で、『ホテル・ニューハンプシャー』や『サイダーハウス・ルール』など、映画化された作品も多い人。

シングルマザーにガープと名付けられた男の子が一風変わったひとたちに囲まれながら成長していく物語。悲劇的なことが次から次へと起きるが、不思議と暗くならない。映画全体を包む寂寞感はあるものの、すべてがどこか不思議と肯定感に溢れている。そこにはLGBT、銃規制、セクハラなどの社会問題も絡むという、まさに今こそ観てもらいたい映画。(しかし40年たった今でもこれらの問題が何も解決されていないとは…)

主演のロビン・ウィリアムズに母親役のグレン・クローズ。そして何と言ってもジョン・リスゴー。(快演!)これ以降、演技派としての名声を得ることになる、これら俳優陣の素晴らしさ。『明日に向って撃て!』『スティング』などと並ぶ、ジョージ・ロイ・ヒル監督のまさに代表作の一本。

ちなみに映画の冒頭にビートルズの「When I’m Sixty-four」が流れるのですが、64歳を待たずに主演のロビン・ウィリアムスは2014年に63歳で、惜しくも帰らぬ人となリました。

つかもと
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☆ガープの世界 と合わせて飲みたいワイン

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パートナーとの死別、有名人の畑を受け継ぐプレッシャー…。波乱万丈な人生を送る女性醸造家ナタリーがつくるワイン。柑橘や青リンゴの爽やかさ。 口の中をスーッと抜ける、心地よい酸がイイ。

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『ガープの世界』1982 年/アメリカ

監督:ジョージ・ロイ・ヒル 出演:ロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ、ジョン・リスゴー、ジェシカ・タンディー、メアリー・ベス・ハート ほか

子供は欲しいが男に支配されたくはない看護婦ジェニーは、第二次世界大戦中に瀕死の負傷兵にまたがって一方的に子供を授かる。ガープと名付けられた息子は、レスリングに夢中になり、恋に悩み、そして小説を書く。個性豊かな人々に囲まれながら少年から青年、そして大人へと成長していくガープ。母も自伝的小説を著し、ウーマンリブの象徴的存在になるが…。悲劇と喜劇が交互にやって来る、彼の数奇な運命の物語。

松尾伸也

「MY FAVORITE THINGS」編集長。酒、レコード、映画、活字、美味しいものの周辺に生きている。本来は「映画は劇場で鑑賞する派」だが、コロナ禍のスティホーム時期に録り溜めしていた映画を少しずつ見出して、いつのまにか千本を突破。映画をアテにチビチビと、好きなお酒を飲みながら過ごす週末を楽しみに日々を送っている。

ダテユウイチ

長崎県出身・福岡在住のイラストレーター。1989年生まれ。2014年より本格的に活動を開始し、シュールでユーモアなタッチの作品を特徴とする。ドローイングや個展を多数開催しており、雑誌、アパレル、企業とのコラボレーションも展開。地域に根ざしたPOP UPイベントなど、多様な形で表現を行っている。