相思相愛のパートナー

文通関係
皆さんコーヒーはお好きですか?コーヒーを飲まない日はありますか?
私はないんです。よほど体調が悪いときは別として。むしろ体調確認の目安にしているほど。
朝起きぬけに水を飲むような感覚で、家にいるときはほぼ無意識にコーヒーを淹れています。
出先で用事が終わると最寄りのコーヒー屋へ足が向かいます。
空気を吸うように、日々あの液体を摂取しています。
なぜ飲むかと考えてみても良くわからないし、単純にカフェインを摂るならお茶でも良いのでしょうが、やはり無性に飲みたいと思う液体はコーヒーです。

コーヒーが私にとってなくてはならない日常のパートナーのようなものであるように、コーヒーにとっても私が良いパートナーであれば良いななんて思っています。“相思相愛”という事です。
コーヒーに関わって25年、いつの間にかこういう状態になってしまったわけですが、こういう人を増やすためにはどんな事をしたら良いだろうか。そして、ここではどんな事を書いたら良いだろうか。
そんな事を考えていてまず思い出すのはコーヒーと人が、貴方と誰かが遠距離文通関係だったあの頃のことです。

ここ数年のコーヒー業界では大きな潮目と言えるあの出来事がありました。
出かけることや対面での交流が途絶えたあの期間を節目に、コーヒーを自分で淹れる人が爆発的に増えた過程を、個人的にはコーヒーに関わる人とコーヒー愛好家の遠距離文通のような関係だったなと振り返ります。
あの頃、あの日々、初めてコーヒーを自分で淹れたという人、コーヒー器具を手に入れるきっかけになったという人、コーヒー関連のサブスク(コーヒー豆や器具がセレクトされて送ってくる)サービスによって多様なコーヒーと出逢った方も多いでしょう。
「飲みたい」「会いたい」「でも会えない」鬱屈とした日々を埋めるのはポストに届く豆。
SNS越しに届くロースターやバリスタ、その向こうの生産者の映像や言葉を追って、丁寧に淹れ、SNSで想いを綴る。
まさに相思相愛文通のような関係。これが繰り広げられていたあの頃。
突然の「禍」の到来は、当然停滞ももたらしたけれど、煽情的とも言える関係性の接近ももたらしました。
あの潮目を経たコーヒー業界では、コーヒー器具の種類や新しいメーカーが増え、サブスクリプションサービスの利用やSNSを経由して、様々な地域のロースターの認知が上がり、オンライン購入が定番化したように思います。今やコーヒー豆の取り寄せが当たり前になったという人も多いのではないでしょうか。

自分で淹れるようになると、もう俄然毎日飲むようになる。
お店に行っても、淹れ方の違いが楽しめたり、豆を選ぶ目線で注文したりするようになる。
実際、コーヒー店のお客様と店員の会話はここ数年で大きく変わったと感じるし、専門店はもとより、様々な場所でコーヒーという飲み物に興味を持ってくれる人が増えました。
コーヒー関連のイベントは全国で活況。

今やリモートでもリアルでも相思相愛関係があちこちで成立しています。
 「あるなら飲んでもいい。から、飲まない日はない。人へ」
まずはこの後、一杯いかがですか?

古賀由美子

CLICK COFFEE WORKS主催。2015年より「福岡を美味しいコーヒーとそれを楽しむ人で溢れる魅力的な街にする」を掲げ、福岡のコーヒーファン増を目指...