
伝説のバンド、レッド・ツェッペリンのメンバーがまだ何者でもなかった時代から、めぐり逢い、やがて衝撃的なデビューへと至る、いわば青春時代を追ったドキュメンタリー映画『レッド・ツェッペリン:ビカミング』が、とにかく最高だった。一部では、圧倒的な存在感でロック・シーンに君臨する姿やツアー中の過激なエピソードを含まず、あくまでデビューから間もない時期までに絞った構成に不満の声もあったみたいだけど、ぜんぜんそんなふうには思わなかったな。むしろそんな野暮なこと言うのは、映画をちゃんと見てないんじゃないかとすら感じた。
あの映画の事実上の主役は、怪物的なドラム・プレイで知られたジョン・ボーナム。1980年に亡くなったボーナムの未発表インタビューが残されていたのだ。しかも、自身の人生を振り返った内容で。私生活ではものすごくシャイだったボンゾ(彼のニックネーム)は、そもそもプロモーション用の取材に応えることは稀だった。1972年にオーストラリアのジャーナリストがテープに収めていた幻のロング・インタビューが発掘されたことで、この映画のプロジェクトはスタートしたのだそう。
まだ20代前半のボンゾが淡々と語るのは、少年時代のこと、音楽との出会い、バンドのこと、愛する妻や家族のこと。飾りのない言葉に耳を傾けるジミー・ペイジも、ロバート・プラントも、ジョン・ポール・ジョーンズも頬が緩む。単に奇跡の再会を喜んでいると言うより、心の奥深い場所にそっと触れられている感じ。彼らのリアクションが、そのままボンゾの人柄の良さの証言になっている。
バンドマンとしてなかなか芽の出ないボンゾが、愛妻パットについて感じていた引け目もリアルだ。めちゃくちゃ恐妻家。「妻が何て言うだろう……」っていつも気にしてる様子は、パワフルなステージでの姿とは対照的で、誤解をおそれずにいえば、かわいい。
自分の腕が買われているのはわかる。でも事情が許すなら、イギリスの田舎で妻と子とひっそり暮らしたい。そんな姿勢はプロらしくないかもしれないけど、社会で実人生を生きている人なら、その気持ちもわかるはずさ!
ロック・ファンならご存じだろう。ボンゾの命を奪ったのはお酒。ロッカーらしくアル中だったというわけじゃない。ツアー中に家族と離れる孤独に耐えきれず、ライブ後のホテルの部屋で一気にあおったウォッカによる悪酔いが原因だった。ああ、せめてそんな夜に、ぼくらが「わかるわかるよ、その気持ち。ボンゾ、一杯おごるよ!」って付き合えたらよかったんだけど。マスター、ボンゾのつらい孤独をいやしてくれる、じんわりと酔えるお酒ください。



ジョン・ボーナムに飲んでもらいたかったワイン
「ソロ ドルチェ・ムーサ2021」は心にじんわりと沁みるナチュラルな甘口ワイン。
グラスから溢れ出るハチミツ、マンゴー、完熟した桃、キンモクセイなど芳醇で甘やかな香り。口当たりはなめらかな質感があり、凝縮した優しい果実の甘みが広がります。
ライブの後にこんなワインでいやして欲しかったな~。
ソロ ドルチェ・ムーサ2021白甘口
ワインの歴史の中で最も重要なワイン産地であり、最高峰の甘口と世界で評されながら、日本ではまだその本質、本領が伝わっているとは言いづらい状況です。そんな中で出逢えた素敵なナチュラルのトカイ。それがソロです。
香りをかぐや否や溢れ薫るバラ、黄桃、きんもくせい。芳香にうっとり。
このワインもミュスカという品種の語源が香水のムスクであることを思い出させてくれます。