第7回 ローラ・リー(クルアンビン)と飲んだ夜

「最近、目をよく見せるようになったのでは?」
 と、クルアンビンのベーシスト、ローラ・リーに聞いたことがある。貴重な電話インタビューなのに、それ聞く? でも気になってたんだもん。
 ローラの答えは「そうかしら? あんまり変わってないと思う」だった。でも、続けてこう答えてくれた。「だけど、以前よりは自分のそのままを出すようになってるかもね」
 クルアンビンが登場したときは、まったくの謎バンドだった。前髪ぱっつんの男女と黒人ドラマー。まるで何かのフィギュアのようでもあるし、サイケデリックで面妖な音楽のムードも相まって「妖怪人間ベム」を思い出したりもした。ということは、ローラの役柄はベラか。マントを羽織って立つ長身の美女。思ったことをズバズバと言い、卑怯な悪を許さない。
 しかし、謎めいたキャラ作りとは対照的に、彼らは自身の出自を隠していなかった。テキサス州ダラス出身のローラは、ギタリストのマーク・スピアとドラマーのドナルド・ジョンソンに誘われて、クルアンビンのメンバーになった。当時、彼女はイギリスで仕事をしていたので、初期の活動は主にリモートでの音源制作をおこなう、いわば架空のバンドみたいなものだった。地元に帰った頃からライブ活動がスタートし、2015年にはファースト・アルバムをリリース。やがて彼らの音楽とキャラクターのうわさが世界中を駆け巡ることになる。
 フォーク・トリオ、ピーター・ポール&マリーのマネージャー、アルバート・グロスマンは、紅一点のマリーに神秘的なイメージを持たせるべく、初期のステージでは彼女にひとこともしゃべらせなかったという。そういうイメージ作りの徹底は、ローラにもある。彼女はライブで着た衣装を毎回変える。決して同じ衣装は着ないと決めているそうだ。
 とはいえ、現代のクレオパトラのようにツンと澄ましたまま、というわけじゃない。むしろ逆。陽気なテキサス娘であるローラは、人柄の良さやかわいさを隠さない。2022年には初めての子どもを身籠ったまま世界をツアーし、無事に赤ん坊を授かったこともファンに伝えている。ミステリアスとフレンドリーの間をすいすいと行き来する、その境目がもしかしたらあの前髪ぱっつんで、目を見せたり隠したりしながら往来を楽しんでいるのかもしれない。
 最近の彼女は、目を見せて笑ってることが多い。そういえば、クルアンビンのファースト・アルバムのタイトルは『The Universe Smiles Upon You(全てが君に微笑む)』だ。彼女は今夜、微笑みながらどんなワインを飲むんでしょうかね。

 

轟木渡
轟木渡

ローラ・リーが開けたのは・・

ローラが開けたのはイタリアの白微発泡。

王冠を開けた瞬間から溢れ出るアロマティックな香り。
そこにはエキゾチックなスパイスのニュアンスも見え隠れ。

イタリアらしい明るさがありながら、でもどこかオリエンタルな空気もある。
クルアンビンの音楽に通じるような、どこか無国籍な雰囲気。

グラスの中ではふつふつと湧き上がる優しい泡。
グレープフルーツやリンゴのような素朴な果実味。
アフターのほろ苦さも心地よい。

ローラは夕暮れからこんなワインを飲んでいる気がする。

カミッロ・ドナーティ マルヴァジア・フリッツァンテ2024白微泡

現当主カミッロの祖父オルランドが、グロッポーネ(あまりの急斜面であったため「背中」と名付けられた)と呼ばれる小さな畑を1930年に購入したことから始まったドナーティ家のブドウ園。
カミッロの代に入り、自家元詰めを開始、1992年に初めてのワインをリリースしました。

妻、妹、義理の弟、従兄弟、義理の父、動ける人はみんな働く文字通りの家族全員でこの地方に残る伝統的な醸造やブドウを守るために尽力しています。

ワインは華やかな香りで手作り感の残る微発泡です。(マルヴァジア)

松永良平

リズム&ペンシル。雑誌/ウェブを中心に記事執筆、インタビューなどを行う。著書に『ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック』(晶文社)『20世紀グレーテスト・ヒッツ』(音楽出版社)。Instagramにて猫イラスト「#一日一猫mrbq」随時公開中。のんべえではないですが、お酒は好きです。