
六月に入ると、蔵のまわりに咲く四葩の花が、白、紫、水色……と少しずつ色を深めていきます。 雨の合間にふと目に入るその彩は、梅雨の湿り気の中にそっと灯る小さな光のようです。 外の景色が濃度を増していくこの季節、山の壽の蔵の中でも、次の一年へ向けた動きが始まります。
そんな六月の入り口で、今年もまた 【ヤマノコトブキ グッドタイムズ サマーセッション】が本格的に動き始めます。 山の壽が届ける「夏のための酒」。 ただ季節に合わせて軽やかに仕上げた一本ではなく、 一杯を通して「この夏をどう楽しむのか」をそっと提案する、 “Good Times” の精神をそのまま形にした夏酒です。
一人で過ごす昼飲みの静かな時間にも、 大切な人と笑い合う夕暮れのひとときにも、 その場の空気を軽やかに整えてくれるような、やわらかな存在感。 飲む人それぞれの“夏の時間”が、そのまま味わいの一部になるように・・・。そんな願いを込めて仕上げています。
このサマーセッションが各地へ旅立つと、酒販店様や飲食店様から 「今年のサマーセッション、大人のラムネですね。爽やかで美味しいです。」 「昼飲みのお客様が“これが軽くてちょうどいい”とおっしゃっていました。」 といった声が届き始めます。 その言葉のひとつひとつが、造り手としての学びとなり、 “夏の酒がつくる時間”が、外の世界でどのように広がっているのかを教えてくれます。
六月は、まさにサマーセッションがいきいきと動き出す季節。 酒が旅立ち、人と出会い、夏の食卓や時間の中でどんな表情を見せているのか。 その“外の世界の気配”が、梅雨の雨音とともに蔵へ戻ってくるのです。
一方で、蔵の中では メンテナンスの真っ最中です。
6、7、8月のメンテナンス日程表が壁に張り出され、 造りの最中に「気になっていたこと」を一つ一つ順番にクリアにしていく季節が始まります。
湿り気を帯びた六月は、機械の状態を確かめ、配管の通りを見直し、床や壁のわずかな変化に耳を澄ませる季節です。 冬の造りとは違い、蔵の中には静かに向かい合う時間が流れていきます。 この穏やかさは、六月ならではの空気であり、次の一年へ向けて蔵の呼吸を整える大切なひとときでもあります。
四葩の花が雨に濡れて色を深めるように、蔵の中でもまた、次の一年へ向けた思考が少しずつ濃度を増していきます。 旅立ったサマーセッションの声を聞き、設備と向き合い、人と対話を重ねながら、未来の輪郭が静かに形を帯びていく。 六月は、そんな“静かな助走”の季節なのだと、毎年のように感じています。





