第3回 シナトラ、ディーン、サミーと飲んだ夜

 1960年代、ラスヴェガスのサハラ・ホテル。有名カジノと世界有数のエンターティンメントを提供するこのホテルで、フランク・シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィス・ジュニアの3人が集うレギュラー・ショーが始まった。ショービズ界の大御所3人を、当時の人は「ラット・パック(ネズミの群れ)」と呼んだ。ハリウッドやラスヴェガス界隈で、夜になるとわちゃわちゃと動き出す連中、という皮肉を込めて、という説もあるらしい。
 大ボスはシナトラ。ボスに愛された芸達者がサミー。ボスとは一線を画したクールなユーモアを持つディーン。3人のショーは歌よりも互いのボケとツッコミ、そして酔っ払っいならではの即興で成り立つのが常だったという。サミーは黒人である自分を認めてくれた期待に応えるべく、いつも必要以上にがんばった。逆に、ステージではいつも上機嫌な酔っ払いだったディーンは、実生活では徒党を組むことが嫌いで、お酒もあまり飲まずにキャラを演じてただけ、なんて説もある。シナトラは大ボスらしく勝手気ままにふるまっていたが、いざ子分がピンチになるとあらゆる手を使って彼らを守った。まあ、義兄弟ってそういうものかしらね。
 ある晩、ショーを前にした3人が座るテーブルに通された。日本人のぼくに先に声をかけてくれたのはサミーだった。
 「よお、楽しもうぜ」
 シナトラはこちらを見向きもしない。だが、すぐにテキーラのショットが回ってきた。ぼくの覚悟を見てるんだろう。
 「ちょっと一服してくるかな」
 ディーンはふらっと席を立ってどこかに行ってしまった。「じゃぼくも」と席を立ちかけたら、サミーが「まあ待てよ、ここはおひとつどうぞ」と酒を差し出しながら、意味深なウィンク。「ボスを怒らせるな」とその目は言っていた。
 観念してくっとテキーラを飲み干すと、サミーは空いたグラスをリズミカルに叩きながらスキャットしだした。
あ、チキチキ・サミーだ……。「あなた、それサントリーのCMでやってたよね。シングル盤持ってるよ。サインちょうだい」とカバンを開けようとしたら、馬の生首が入っていた! わ、これって『ゴッドファーザー』でシナトラ絡みの事件がモデルって言われてたやつ!
 目を剥いて驚くぼくを見ながら、シナトラはあっはっはっはと大笑いした。その笑い声があんまり痛快なものだから、その場にいた数百人が一斉にこちらを見た。これがスターってものだと思った。
 目が覚めた。二日酔いかも? 外には春の気配。鳴いている鳥の声が、シナトラ父娘が歌う「恋のひとこと(Somethin' Stupid)」みたいに聴こえた。

轟木渡
轟木渡

☆ラット・パックと合わせて飲みたいジン

上機嫌な酔っ払いになるにはこんなジンはいかがでしょう?

長野 野尻湖のほとりで造られるYAMATOUMI。
いわゆる王道の味わいとは一線を画すこのジンはとにかく香りの要素が多く、うっすらにごりもあって個性的。

ホーリーバジル、レモングラス、オレンジバームとなかなかの曲者をボスであるジュニパーベリーがまとめる、というスタイルはどこか件の3人に通じるような・・。
ストレートでキュッと飲むのもよし、個人的にはジン・ソーダがお気に入り。

YAMATOUMI GIN  15TH BATCH 37度 500ml

YAMATOUMIのスタンダードはコレ。
自家栽培のハーブをたくさん詰め込んであります。グラスから漂ってくるハーバルな香りは温度帯によって変わってくるので色々お試しください。

食中に口直しで飲んだり、食前、食後酒として、まあとにかく、お好きなように、色々楽しめるかと。

松永良平

リズム&ペンシル。雑誌/ウェブを中心に記事執筆、インタビューなどを行う。著書に『ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック』(晶文社)『20世紀グレーテスト・ヒッツ』(音楽出版社)。Instagramにて猫イラスト「#一日一猫mrbq」随時公開中。のんべえではないですが、お酒は好きです。