西酒造の蔵見学で感じた、酒造りの“やさしい哲学”

鹿児島県日置市にある西酒造は、創業1845年、広さ5000坪の敷地を持つ歴史ある蔵元です。
今回見学させていただき、焼酎造りの現場に触れることで、酒に込められた“やさしさ”や“思いやり”を肌で感じることができました。
西酒造では、焼酎だけでなく、日本酒、ワイン、ウイスキーも手がけており、まさに『総合酒蔵』!
とはいっても、大量生産を目指しているわけではなく、造り手の手が届く範囲で丁寧に誠実に酒を育てている印象を受けました。
これからちょっと掘り下げていこうと思います。
かつて焼酎といえば、お湯割りで飲むのが定番でしたが、西酒造は「食事に寄り添う焼酎」を目指し、フルーティで軽やかな味わいへと進化させています。
社長が大切にしているのは「のど越しの良さ」。すっと飲み込める心地よさを追求し、飲み手が自然に手を伸ばしたくなるような焼酎を目指しているそうです。
銘柄ごとに酒質を変える工夫も印象的でした。
「富乃宝山」はタンク仕込みで爽やかに、「吉兆宝山」や「白天宝山」は甕壺仕込みで深みのある味わいに。
仕込み場所や蒸留器まで変えることで、それぞれの個性を際立たせています。低温発酵を可能にするサーマルタンクの導入も、酒質へのこだわりの表れです。
芋の原料処理は最大41トンにも及び、すべて手作業。工程を4段階で役割分担を行い、綺麗な部分だけを使っていく徹底したこだわりを感じることが出来ました。
蒸留後の焼酎は最低でも半年間熟成させ、雑味を取り除くなど、細部にまで気配りが行き届いています。

因みに、皆さんご存じでしたか?
それぞれの銘柄は3年おきに酒質設計を変えてブラッシュアップされているんです。
芋の品種や麹の種類、蒸留方法、熟成期間などを見直してより食中酒としての完成度を高めているそうですよ。
昔、『富乃宝山』を飲んだことがあるという方は是非今の『富乃宝山』を手に取って飲んでみてください。きっと昔のイメージががらりと変わったことに驚きを感じることでしょう!
蔵人へお話を伺っていて、さらに驚いたのが「屋根のない蔵」という考え方。
西酒造では1月〜7月の間、蔵人が畑に出て芋や米を育てます。
契約農家と共に、自分たちが使う原料を丁寧に育てることで、酒造りへの理解と愛着を深めているのです。土に触れ、作物の成長を見守ることで、酒の味わいにも自然と優しさが宿るように感じました。
様々な場所を見学して気づいたこと。それは、蔵内すべての場所においてクラシック音楽が流れていました。
蔵人の集中力と穏やかな空気を保つ工夫もされていました。
蔵内には『酒に優しく』『人にやさしく』という工夫が随所に為されていたことにはとても感銘を受けました。

※他にも『天使の誘惑』の設備を見学させていただきました。
『天使の誘惑』はシェリー樽で10年寝かせたウイスキータイプの焼酎です。実に950樽が眠っているそう。この景観は圧巻でした。
長い時間をかけて樽熟成を行います。その間にアルコール分や水分が蒸発していくので、より甘みやコク、味わい深き焼酎ができるのです。
この歴史を刻んだ『天使の誘惑』。食後に飲むハイボールとして家に置いておこうと私は決めました!

そして次に訪れたのが、鹿児島市にある御岳蒸留所。標高約400mの冷涼な丘陵地に位置し、桜島(旧名:御岳山)を望む絶景の地にあります。
この日は雨で桜島は見えませんでしたが、設備の美しさと近代性に驚きました。
地下300メートルから汲み上げた天然水を使い、初留・再留のポットスチルを各1基ずつ設置。蒸留は3回に分けて行い、香り高く味わい深いニューポット(蒸留を終えた直後の無色透明な原酒の意)を丁寧に造り上げます。
1本のウイスキーに使う水は約120リットル。排水も多量に出るため、敷地下にあるゴルフ場へ散布するなど、サステナブルな取り組みも印象的でした。
以上です。
今回の見学で感じたことは、冒頭で書いた、酒に込められた“やさしさ”や“思いやり”。
西酒造の酒造りは、すべて同じ職人たちの手によって行われています。1月から7月までは農業に取り組みながら、焼酎・日本酒・ワイン・ウイスキーの4種を造る職人を育てています。こうしてジャンルを超えた技術と知識がひとつにつながり、互いに良い影響を与え合うことで、より高い品質の酒造りにつながっています。
「焼酎は完成しない。常に進化するもの」という言葉が象徴するように、西酒造の酒造りは“変えないために変える”という哲学に貫かれています。
これからの酒質のブラッシュアップ、そして新たな挑戦に、ますます目が離せません。
是非皆さん、『西酒造』の焼酎、ウイスキーを飲んでみてください。きっとその思いを感じることが出来ることでしょう。





