石田カズーのフランス2024「ジュラ編②」

続いて向かったのは、ジュラ地方を代表する『ドメーヌ・ガヌヴァ』
ジュラ地方の中部、ロタリエ村にあります。

古くは1650年まで遡ることができる歴史あるドメーヌで、現在は14代目のジャン・フランソワ・ガヌヴァが運営しています。
個人的に大好きな造り手なので、『ガヌヴァ』の表札が見えた時は本当に感動。

醸造所に向かっているとジョスランが出迎えてくれました。
ジョスランは、10年以上エノローグ(ワイン醸造技術管理士)として蔵の醸造サポートをしていましたが、2020年からは、醸造長として本格的にチームに参加しています。
ワイナリーに入ると、出荷前のガヌヴァのワインが山積みにされていました。

なんだか夢のような光景ですね。笑
スタッフがせっせと仕事中です。ちなみにBGMはニルヴァーナの代表曲『Smells Like Teen Spirit』。

テイスティングは、赤ワインから。(フランスでは、白ワインからテイスティングすると赤ワインの酸を感じづらくなるから、赤ワインからテイスティングをしてほしいと言われることがほとんどでした。)
まずは、2023年のボジョレーガメイ。続いてジュラのガメイ、アルザスのピノノワール、ブルゴーニュのピノノワールと買いぶどうのワインをひと通り飲ませて頂いたところで畑へ。

マルヌ・ブルー、マルヌブランシュと呼ばれる土壌で、ブルー(青系)の細かい石が多い青色泥灰岩土にはサヴァニャンが、石灰質粘土のブランシュ(白系)にはシャルドネがよく合うということで、植え分けているそうです。

畑には無数の石が!


畑好きな轟木もとても嬉しそう。(笑)

畑から戻り、ドメーヌもののテイスティング。
プールサールとアンフェリネから始まり、トゥルソー、ピノノワール、プリムールのピノロゼとジュラに来たことを実感するセパージュ。

そしていよいよ白ワイン!赤も好きですが、個人的に白ワインは格別だと思っています。

白ワインはテラコッタ(素焼きの壺)は合わないが、赤は合うとジョスラン。

グランデップ21、22、フロリンヌ21、シャラス・マルヌ・ブランシュ、特に印象に残ったシャモワ・デュ・パラディ20。圧倒的な厚みと酸の伸び。ジュラだなと思わせる野太い酸が骨格を造り、余韻を長くしてくれていて、素直に美味しい・・。

テイスティングすること19種類!吐くのが勿体なくて全部飲んでいたのですが、さすがに酔いが・・・笑
ジョスラン メルシー!

 

さらにガヌヴァから車で15分ほど、この日最後の訪問先『ドメーヌ・デ・ミロワール』へ。
アルザスのジェラール・シュレールのもとで働いていた鏡健二郎さんが、2011年にジュラ県の南に位置するグリュス村に移り住み、奥様の真由美さんと二人で始めたワイナリーです。
近年、クオリティの良さと生産量の少なさから世界各国でカルト的な人気を誇り、なかなか見かけることの少ないワインの一つとなっています。
出逢ったときには是非飲んでいただきたいワインです。

初めてお会いする鏡さん。背筋がなんだかピンとなりました。笑
近況を話しながら、畑が見える丘へと移動。

真ん中に見える道路の両側がミロワールの畑。
左側の土壌は、バショアン(ジュラ紀中期の地層でウミユリの化石を含む固い石灰岩)でシャルドネのみ。右側は、マルヌ、リアスでシャルドネ、サヴァニャンを中心に色々植えているとのこと。
三方を森に囲まれていて、森を抜けてくる風は湿気を多く含み葡萄が病気になりやすいため、森に近い場所には病害耐性が強いサヴァニャンを植えています。
また、畑にはシャモア(ウシ科ヤギ亜科)が5、6匹やって来て、芽も葡萄もいっぱい食べてしまって大変みたいです。2mくらいぴょんぴょん飛び跳ねるんですって。やめてくれー!笑

黄金バッタが介在するフラベッソンブレという病気も流行ってきていて、罹るとウィルスの病害で樹を引き抜かなくてはいけなくなる。
イタリア・ピエモンテの某造り手もこの被害を受け、リリースできないワインもあったそうです。一度抜いてしまうと、最初からやり直し。植えなおした樹の葡萄がワインになるまで最低でも3年。ワインには莫大な時間と想いが詰まっていますね。




日が暮れる前にワイナリーへ。
カーブは、ひんやりとしてなんだか厳しい印象。神聖なところに入った時のあの感じ・・

最初のテイスティングは、2023年のプールサールとトゥルソーのブレンド。
メインは19歳の若木で、バスランというアコーディオンのように両脇から葡萄を潰していく水平の圧搾機でプレス。
樽香はつけずに果実の良さをストレートに表現しています。
この年は、暑くて雨も多く、うどん粉病やベト病が出たそうです。アルコール度数も例年より上がったとのこと。

続いて2022年のサヴァニャン。冷涼な産地で造られたことがわかる味わい。
こちらも古樽を使用している為、樽香はほぼ感じない。美味しい・・・
鏡さんは、あまり樽香を好まず、葡萄そのものが複雑であれば樽香がなくてもバランスを保てるのではないかと考えているそうです。
また、数字を見ちゃうと数字に寄せてしまうので、ほぼ数字の分析はしないし、試飲もあまりしない。試飲しすぎるとどうしても迷ってくるし、味覚も惑ってくる。あくまでも官能で選択しているそうです。
2018、2020年のシャルドネ、2018、2019、2020年のサヴァニャンと続き、計8種類のテイスティングをさせて頂きました。
どのワインも清涼感のあるフレッシュな香りに、縦にぐっと伸びる生き生きとした酸味。線が細いながらもエネルギーがある。

ストイックにワインに向き合う姿勢や情熱がひしひしと伝わってきました。
真剣な人は目の色が違う。
1本1本しっかりワインに向き合い、伝えていきたいなと思います。

この日の夜は ミロワールをこよなく愛するシェフの山の中のレスランAutour de l'Atre へ。

(ジュラ編③に続く)

石田和也(カズー)

とどろき酒店 薬院stand!店長。ニックネームはカズー。趣味:ワイン/音楽(jazz)/キャンプ/温泉•サウナ巡り
ワインほど感動できる飲み物に出逢えたことがありません。感動するワインは人それぞれ。そんな1本をご紹介できたらと思います。