長月の久留米は、稲が刈られ始め、空に秋の気配が混じる季節です。 朝の風は夏の熱をわ
ずかに手放し、秋へ向かう静かな移ろいが広がっていきます。
2026年9月20日。 山の壽の酒造りが始まりました。
蔵の扉を開けると、空気が少しだけ張りつめ、これから始まる長い冬の造りを予感させま
す。
造りの初めに行うのが「秋洗い(あきあらい)」です。 7BYで使った道具たちを蔵の奥
から出し、ひとつひとつ丁寧に洗い、磨き、点検していきます。麹蓋、タンク、櫂棒、ホ
ース、計器類。どれも冬の造りを支える大切な相棒です。
秋洗いは、ただの作業ではありません。 酒造りの新しい季節を迎えるための、蔵の“儀式”
のようなものです。蔵人たちがこれからの造りで共に頑張る道具と向き合いながら、心を
造りのモードへ切り替えていく大切な時間です。その時間に入ると、蔵は一気に“造りの季
節の顔”になります。

これから造りの季節の訪れとともに、秋冬限定の一本をご案内させていただきます。 それ
は、「ヤマノコトブキグッドタイムズ ナイトセッション」。
爽やかなサマーセッションとは異なる、夜の時間を楽しむための一本です。コンセプトは
「月と私とナイトセッション」。 秋の夜長に寄り添う和三盆のような上品な甘さでゆっく
りと飲み続けられる穏やかな口当たりの季節限定酒です。
色づく長月は、酒造りのはじまりの季節です。 蔵が動き出し、人が集まり、道具が目覚め
、季節が深まる。 そのすべてが、これから続く冬の造りへ向けた確かな一歩となります。
あとがき ― 蔵の季節を歩いて -
とどろき酒店轟木渡社長からのお声かけで、 『蔵の季節を歩く ― 山の壽の一年』 という
コラムを書かせていただきました。
これまで、こうした文章を綴る機会はありませんでした。 けれど、本を読んだり、習い事
を通して先生や先輩方のお話を聞く中で、 「この言葉の使い方は素敵だな」 「こんな表
現があるんだな」 と心に残った言葉を少しずつ書き留めてきました。 その小さな積み重
ねが、このような形で表せたことを、とても嬉しく思っています。
蔵の一年を追いながら文章を書くことは、 自分自身を静かに見つめ直す時間でもありまし
た。 季節が変わるたびに蔵の表情が変わり、蔵人の姿勢が変わり、 自分の心もまた少し
ずつ整っていく。 そんな変化を言葉にすることで、 “蔵元としての軸”があらためて自分の
中に根を張っていくような感覚がありました。
その中で、八代目として私がやりたいことも見えてきました。 それは、 「山の壽 純米吟
醸 山田錦 辛口」 を蔵の柱として育てていきたいということです。
福岡の酒といえば「山の壽」。
そう胸を張って言える一本を、これからも様々な課題と向き合いながら造り続けていきた
い。 この酒が、山の壽の未来を支える確かな芯となるように。 山の壽の皆と共に、その
歩みを進めてまいります。
最後まで読んでくださった皆様、 季節の移ろいとともに歩む蔵の一年にお付き合いくださ
り本当にありがとうございました。 これからの山の壽の歩みを、皆様の食を通して感じて
いただけたら幸いです。
山の壽酒造株式会社 八代目当主 片山郁代





